製作中、子ども達の想像力にびっくりする場面がいくつもあったのですが、
それとは別にもう一つ、
「子どもがいかに大人達をよく見ているか」
ということを実感する場面もたくさん見せてもらいました。
今日はその中から一つ、四歳の男の子の話を紹介しようと思います。
製作期間中は嬉しいことに、僕が絵を描いている様子を毎朝見にきてくれている子が何人もいまして、 その中の一人が三日目の朝に僕にかけてくれた言葉。
「ひでちゃんがんばっているから、このきれいな石のどちらか一個、あげるよ。」
両手に一つずつ、キラキラ光沢のある石をプレゼントに持ってきてくれました。
それで、僕が小さい方の石をもらうと、彼は
「おうちに帰ったら、そーっとそーっとしまってね。小さいから、大切にね。」
こんなアドバイスまでくれたのです。
その「そーっとそーっと」という言い方が僕はとても心地よくて。
小さいのに素敵に言葉を使えるなぁって感心しました。
それでふと気づきました。
この「そーっと」という言葉。
彼は四歳だし、副詞の意味や使い方を教わって使うようになったわけではないでしょう。
そう考えると、見えてくるのは彼の環境や周りにいる親や先生といった大人たちの風景です。
「そーっと、大切にね。」
彼の日常でこんな風に言葉を使う大人がいるから。
もしくは絵本や物語や、そういう言葉が身近にあるから。
だから彼は「そーっと」の一言を自然と添えたのでしょう。
こんな場面を見ると、大人の使う言葉って大切だなぁということをあらためて思います。
それは、単純に子どもにお行儀の良い言葉・丁寧な言葉を教えるために大人が正しい言葉を使いましょうというのとは少しちがっていて、
まずは自分自身が豊かにいられるために、自分なりのキレイな言葉を大切にしたいということ。
そしてもしその感覚が、自然と子どもにも伝わったなら、それはすごく嬉しい。
大人は大人自身を育て、
そんな大人を見て、子どもも子ども自身で育つなら、
それはちょっと素敵な教育の在り方の一つじゃないかと思います。